中国語の「摸鱼」(繁体字は「摸魚」)という言い方は「混水摸鱼」という四字熟語から来ています。
「混水摸魚(こんすいぼぎょ)」は三十六計の第二十計です。
「水を混ぜて魚を摸る」つまり、 水をかき混ぜて魚が混乱しているときに、その魚を狙って捕まえるという意味です。
古代においては、
- スパイを送り込んでデマを広めて敵の内部を混乱させ(混水)、それに乗じて叩き潰す
- 政略結婚で相手を自分の意思通りに操る
- 交渉で相手を巧みに惑わし、自らに有利になるように事を運ぶ
といった戦術を指します。
「摸鱼」は「混乱に乗じて利益を得る」という意味から、今は「仕事中に個人的な事をする」つまり「サボる」という意味で使われています。
仕事をしっかりではなくそこそこに行いつつ(混水)、サボって別のことをする(摸魚)ことです。
まさに職場での「混水摸魚(こんすいぼぎょ) 」の計というわけです。
これは単に「サボる」という意味以上に、中国の「成功するために奮闘する」という意欲を失った若者たちの心理上の側面を反映した表現と言えます。
今の中国の若者たちの生き方を表す他の流行語として、下のようなものがあります。
- 「佛系(仏系)」:人生に嫌気がさして他人の意見に関わることなく好きなことをして生きていく消極的態度
- 「躺平族(寝そべり族)」:過酷な競争社会を生き抜くことを諦め、最低限の生活を送ることを志す生き方
「摸魚」も今の若者たちの生き方の側面を反映した語と言えます。
ただ、「摸魚」=「良くないこと」というように認識されている訳でもないようです。
若者たちにとって 「摸魚」 は、「自分ではどうにも変えられない社会や職場に対する不満やうっぷんを晴らすための正義の手段」とも見なされています。